こんにちは、デザイナーの高島です。
私は四半世紀ほど前(いやもうちょっと前)デザイン・特にタイポグラフィーに興味を抱き、この世界に入りました。
当時CD全盛期でそのジャケットのデザインがかっこよくて、さらに昔は雑誌もたくさん発行されていてとても刺激的でした。
初めて就職した会社ではデザインを「版下」で作っていた時代で、Macが会社に1台しかなく、その会社で一番できる先輩デザイナーさんがその貴重なMacを使う・・・そのような時代でした。
今回は私がアナログな時代を通過し、デジタルへの移り変わり、あらためて感じたおはなしです。
「神は細部に宿る」
当時ぺーぺーだった私は、版下でデザインを作成していました。
そもそも「版下」とは、チラシやパンフレット、雑誌などの印刷物において、デザインやレイアウトを固め、文字や写真などを配置し印刷に必要な版を制作する工程です。
いまPCのAdobe Illustratorなどのソフトでやっていることを、レイアウト用紙上と頭の中で処理するイメージです。
現代ではパソコンでカラーの画面を見ながら、拡大縮小したり、色をつけたり、レイアウトを組んだりできますが、当時は全てモノクロの状態で版を作り上げるというものでした。そして最終的な印刷物が完成していったのです。
写真のトリミング、フォントの種類、級数、行間、字ツメ、色の指定。。
全て頭の中で想像し、手書きで指定していました。
版には「精度」と「構成力」が詰まっていたように思います。
その指定は絶対に間違いが許されないもので、何度も間違いがないか確認していたものです。
誤字・誤植が見つかったら、徹夜で1文字ずつカッターで切り貼り・・・このようなことは日常茶飯事でした。
(写植参考)https://note.morisawa.co.jp/n/n535327356e72
いまではAdobe IllustratorやPhotoshopといったデジタルツールが登場し、作業は飛躍的にスピードアップし、アイデアを素早く形にできるようになりました。
スピードと効率が求められるなか、データをすぐに作成できる反面、「考えながら完成を想像して作業をする」プロセスは少し薄れてしまったように感じています。
最後までディティールを追求し、細部にまで時間を費やすことは昔と変わらないように思います。
おしまい
版下の作成は、デザイン業界の歴史において非常に重要な技術で、手作業で細部にわたって精度を追求しながら作成した版下は、今でもその価値が感じられます。
デジタル化によりデザイン制作は格段に効率化され、修正や変更が容易になりましたが、手作業で培われた感覚や技術は、今もデザインの基盤です。
AI技術やツールが進化する中、版下時代に学んだ「精度」と「構成力」は、デジタルツールを使う際にも重要なスキルのひとつになるのではないかと思います。
今一度最初のころに戻って方眼紙と向き合ってみるのも良いのかもしれません。