2024年11月、HTML、CSS、JavaScriptなど、ウェブ技術を象徴する新しい公式ロゴが発表されました。こちらがそのデザインです。
その中でも注目すべきは、CSSロゴに使われた深い紫色です。一見ただの紫に見えるかもしれませんが、この色には特別な名前がついています。それが「rebeccapurple」です。
左が「purple」右が「rebeccapurple」
「purple」は鮮やかな紫色ですが、「rebeccapurple」は少し深みがある落ち着いた紫色ですよね。この特別な名前は、CSSの名前付きカラーとして登録されている約150種類の色のひとつです。
CSSで色を指定する方法
CSSでは、色を指定する方法がいくつかあります。たとえば、赤色を設定したい場合、以下のようにさまざまな方法で表現できます:
/* 16進数コード */
color: #FF0000;
/* RGB値 */
color: rgb(255, 0, 0);
/* 名前付きカラー */
color: red;
名前付きカラーは、その名前を見るだけでどんな色か直感的にわかる便利な方法です。「green」や「blue」のようなシンプルな名前から、「forestgreen」や「goldenrod」といった個性的なものまで揃っています。
そして2014年、今回の主役「rebeccapurple」という色が新たに名前付きカラーに追加されました。
ただの色の名前ではない、この名前に込められた物語をご紹介します。
「rebeccapurple」に込められた想い
「rebeccapurple」という色名は、ウェブ開発者エリック・マイヤー氏の娘、レベッカ・アリソン・マイヤーさんに由来しています。エリック氏はCSSの第一人者として知られていますが、しかし、2014年6月7日、レベッカさんは6歳の誕生日に脳腫瘍との闘病の末に亡くなりました。
レベッカさんは幼い頃から家族や友人たちに「Becca」と呼ばれていました。この名前は愛情を込めた短縮形で、親しい間柄の人々にとって特別な響きを持っていました。
しかし、「Beccaは赤ちゃんっぽい名前だから、6際になったらRebeccaと呼んでほしい」と自らの意思を示していました。
そして彼女は6歳の誕生日を迎え、「Rebecca」として過ごした時間はわずか12時間と短いものでしたが、間違いなく彼女は6歳になっていたのです。
彼女が亡くなった後、ウェブ開発コミュニティはレベッカさんの記憶を永遠に残すため、彼女の好きだった紫色をCSSの名前付きカラーとして追加する提案を行いました。
当初、この色名は彼女の愛称の「beccapurple」と提案されていましたが、エリック氏は娘の意思を尊重し、「rebeccapurple」という正式名称にすることを希望しました。
エリック氏は次のように語っています:
「彼女は6歳になりました。約12時間の間、彼女は6歳でした。だから『Rebecca』なのです。そして、そうでなければなりません。」
CSSの歴史に刻まれた「rebeccapurple」
そして同月2014年6月、レベッカさんの訃報からわずか数週間後に、「rebeccapurple」という名がCSSの公式仕様に追加されました。この色コード#663399は、多くの開発者の共感を呼び、ウェブ開発の世界に特別な意味を持つ色となりました。
「rebeccapurple」がCSSの名前付きカラーリストに加わったことは、単なる技術的な更新を超えた出来事です。
それは、エリック氏とその家族を支えたいというコミュニティの思いが結集した象徴的な出来事でした。
エリック氏が自身の悲しみを共有し、それに応えた多くの開発者たちの温かい支援が、この出来事をウェブの歴史に残る特別なものとしたのです。
そして公式ロゴに採用へ
2024年11月、新しいCSSロゴの公式カラーとして「rebeccapurple」が採用されました。この選択は、10年が経った今でもこの色がウェブ開発の世界で特別な意味を持ち続けていることを示しています。
「rebeccapurple」に込められた特別な物語は、技術を超えた人々の絆や共感を象徴するものとして、ウェブの歴史にさらに深く刻まれることとなりました。
最後に- なぜこの記事を書こうと思ったのか
先日、Webエンジニア向けのYouTube動画で「rebeccapurple」の紹介を見て、その背景にあるストーリーに深く感動しました。この色には、技術を超えた人間味あふれる物語が込められていることを知り、「もっと多くの人にこの特別なエピソードを伝えたい」と思うようになったのです。
しかし、2024年11月現在、日本語でこの色について詳しく解説している記事や動画はあまり見つかりませんでした。新しいCSSロゴの背景色に採用されたことで今後注目が集まるかもしれませんが、現時点ではそのストーリーを知る機会が限られています。
だからこそ、この物語を少しでも多くの人に届けたいという思いから、この記事を書くことを決めました。
それと僕のアメリカ人の妻も「Rebecca」という名前なんです!
僕や周りの家族は、彼女を「Becca」と呼んでいます。
日本で例えるなら、「さやか」さんを「さや」と呼ぶような感じでしょうか。
自然と短く呼ぶことで、親しみが感じられるのは万国共通ですよね。
だから「rebeccapurple」の物語を知ったとき、その背景を知るほどに、僕自身も少し感情移入してしまいました。
ちなみに、妻のベッカは英語スクールで先生をしていますが、子どもたちに「ベッカ」が「バカ」に似ているとからかわれてしまったことがあったそうです(笑)。それ以来、学校では「Rebecca」とフルネームで名乗るようにしているそうです。
「rebeccapurple」には、名前に込められた愛情や絆が詰まっており、CSSという一見冷たい技術的な要素に、温かみと人間らしさを加えているように感じます。
この記事が、単なる技術解説を超え、人間味あふれる物語として、多くの方の心に届けば幸いです。